以前自分のブログにもチラッと紹介させていただきましたが、テレ東Youtubeチャンネルのウクライナ危機(ロシアのウクライナ進行前の投稿)に至るまでのロシア目線での解説動画の中でチラッと触れられた小説「同志少女よ、敵を撃て」読ませていただきました。
小説の賞に関しては無知なもんで申し訳ないのですがアガサ・クリスティー賞受賞(選考員全員が最高点をつけたのは史上初とのこと)作品、直木賞候補作品とのことです。
散々報道されていますウクライナでの戦争を機に「なぜロシアは侵攻を始めたのか?背景には何があったのか?日本との関係性は?」というのを自分の中で調べ尽くして(まーだまだ分からないことばかりですが)上の解説動画の豊島氏がロシアの歴史(独ソ戦)を知る一助になるとのことで購入しました。
あらすじ
第2次世界大戦中、ソ連の田舎の村で暮らしていた少女セラフィマは急襲したドイツ軍によって母親、故郷の村の人たちが殺されてしまう。
自分自身も殺されかけたところに赤軍(ソ連)の女性兵士イリーナに助け出される。しかし彼女によって母親の遺体や村を燃やされ、唯一の両親の写真を捨てさせられ、母親を撃ったドイツ軍狙撃手とイリーナへ復讐するためにイリーナ自身が講師を務める「中央女性狙撃兵訓練学校」へ入る。
そこで親兄弟、子供を喪くした同世代の女性狙撃手達と出会い訓練、戦場をともにして数々の死地を乗り越え独ソ戦最終局面、彼女がスコープで見た真の敵とは、、?
とりあえず歴史がどうのは置いておいて物語としてめちゃくちゃ面白かった。
よく小説を読んでいて物語後半になってくると「もう終わっちゃう」って虚無感に駆られたりするものですが多分この小説が読んでて一番ソレを感じた。かなりボリュームはありますけどね。
確かに絶賛されているのがよくわかる。主人公はじめメインキャラがほぼ女性というのもあり女性目線での戦場(女性スナイパーが実際に戦場に出たのはソ連のみらしいです)がよく描かれています。
キャラの個性、考え方もそれぞれで「女性にだって戦えることを証明するために」「子供たちを犠牲にしないため」などそれぞれの正義、野望を元に戦っていきます。イリーナに「何のために戦うか?」を問われた際に主人公セラフィマは「女性を守るために戦う」と答えますが、激烈な戦線の中でソ連人でありながらドイツ兵士と愛人になる女性、一方でドイツ人でありながらドイツ兵士に虐げられている女性、ソ連兵士に犯されるドイツ人女性、、
一体彼女にとっての正義とは何なのか?また、だんだんと狙撃数を重ねて殺人を楽しんでいる自分への苦悩、かなり丁寧に心境の変化を捉えらていると思います。
イリーナの戦友としてリュドミラ・パヴリチェンコという女性狙撃手が登場します。
彼女は実在のスナイパー
確認戦果309名。ドイツ兵にも恐れられていた史上最高のスナイパーです。
世界大戦中のソ連の様子や戦況もかなり研究されているようで詳しく書かれています。
小説最後には多くの参考文献が掲載されていますね。
世界史やミリタリーに詳しい人でないと結構難しい単語が出てきたり、意味を調べてみてもイマイチ頭でイメージできない描写があったのも事実。
ってことでぜひ映像化もしてほしい作品ですね。(できればアニメで)かなり映えそう。
勉強にもなるしストーリーもかなり練られてて面白い、作者の逢坂冬馬さんはこれがデビュー作らしいです!今多分どこの書店でも大きく宣伝していると思うのでぜひ手に取って読んでみてほしい。
作者の逢坂さんは「現在の国際情勢下で自分の本が売れることにやりきれない気持ち」とツイートしておりまして(最新の重版の印税相当分は全額UNHCRに寄付する旨も書かれていたことお伝えします)正直申し訳ないです、多分このウクライナ侵攻がなければ読んでいなかったし多分出会ってもいなかった、、、
そもそもこの戦争でロシアやウクライナの歴史を調べたし、クリミア併合についても知った(クリミアって地名しか知らなかったです今まで、、)。そして今実際にウクライナの領土で戦争が起こってしまっていますが新冷戦の縮図、欧米、中国、ロシアそれぞれの立ち位置というのも何となくわかってきました。
今多くのメディアで報じられているウクライナでの戦争の情報を取捨し、背景を調べて自分なりの考えを持つことも大事なのではないかなとこの年齢になって、こんな最悪な事態になって初めて気づきました。
まあこれは今回の戦争だけに限らず何にでも言えることですよね。
ウクライナ側の市長の誘拐とロシアの息のかかった代理市長の建て替え、ロシア国内で不利なニュース(欧米寄りのニュース)報道をした者への重い罰則などリアルに起きていることなのか疑いたくなるほど信じられないことを続けていますね。
その間にも多くの難民や砲撃される街、命を失う人々が増えています。
開戦当初は世界中誰も(プーチンも)ここまで長引くとは思っていなかった。現時点で4度目の停戦交渉をしていますがなかなか進展しない現状、少しでも多くの命が助かる平和的な解決を望んでいます。
自分はロシア内での革命や政権弾圧でも起きてプーチンを降ろさせるほか解決する術がないのでは(ロシア国内では徹底したプロパガンダが続いておりますが)と考えていたのですが、こちらの日本在住ロシア人の方々をゲストに呼んだアベマの番組でYoutuberピロシキーズの小原さんは
「ロシア国内も含めて一斉にプーチンの敵となった時に彼がどんな行動をするか?核のボタンを押さないかどうかも分からない」と意見されていてなるほどって思った。
ここまでやって双方が納得できる解決方法はあるのでしょうか、、?
戦争終結後のウクライナは?ロシアは?世界はどうなっていってしまうのか、、。
調べて、ニュースを見て、考えれば考えるほど分からないです。
戦争反対。もちろんそうです。ただこの戦争で国土を蹂躙されているウクライナの人々や家族を喪った人のことを思うとそう簡単にはいかない本当に悲しくて難しい問題なんだと思いました。
第2次世界大戦後ウクライナはソ連の一部ではありながらも国連では独自の議席を設けるなどソ連の中で破格の待遇であったらしいです。
「同志少女よ、敵を撃て」では戦後のエピローグにて「ロシア、ウクライナの友情は永遠に続くのだろうか?」と問う一節がありました。
実在の人物が登場こそしているものの、もちろんフィクションの物語ではありますが
熾烈な独ソ戦を戦い抜いた主人公の女性狙撃手は今の世界を、ロシアをどう思うのだろうか。
最後にStingの貼っておきます